目次
日本語能力試験(Nレベル)は外国人が対象の日本語コミュニケーション能力
画像:日本語能力試験HP
日本語能力試験とは、
- 日本語の文字や語彙、文法についてどのくらい知っているか
- 日本語の知識を利用してコミュニケーション上の課題を遂行できるか
というように、外国人が日本人とコミュニケーションを行う上で必要となる能力を測る試験のことです。
日本語を母語としない外国人が「読む」「聞く」という言語行動によって日本語の能力を測り、当てはまるレベルの証明書が発行され、資格として提示することができます。
多くの企業でも、日本語能力試験のレベル(Nレベル)を元に仕事上でコミュニケーションを取れるか、戦力になるか、を判断し採用活動を行います。
外国人が日本語能力試験を受験する理由・メリット
日本語を母国語としない外国人が日本語能力試験を受験するメリットとして以下のことがあげられます。
- 日本の出入国管理上の優遇措置を受けるためのポイントが付与される
- 日本の医師などの国家試験を受験するための条件となる(N1が必要)
- 日本の准看護師試験を受験するための条件となる(N2以上で国語試験免除)
- 日本の中学校卒業程度認定試験で一部の試験科目が免除される(N2以上で国語試験免除)
- EPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士の候補者選定の条件となる(国によってN5からN3以上の認定が必要)
など、日本での居住で優遇を受ける以外にも、特定の職業では一定のレベル以上が必要となるケースもあります。
日本語能力試験は純粋な日本語レベルを証明できるため、就職活動以外でも、生活の中の様々な場面において役立つのです。
日本語能力試験と日本語検定の違いは、母国語が日本語かそうでないか
画像:日本語検定HP
上述したように日本語能力試験は、日本語を母語としない外国人が対象となる試験です。
名前が似ているせいか、よく勘違いされがちな「日本語検定」という試験もあります。
日本語検定とは、普段から日本語を使う人を対象とした検定です。
「普段使っている日本語を勘違いや思い違いがなく正しく使えるようにする」というコンセプトを持った検定として、基礎的な日本語レベルから社会人に求められるレベルまで幅広く出題されます。
ですので、日本語検定は日本人もしくは、日本語を一定水準以上で使用できる外国人向けの検定と言えるでしょう。
日本語検定 | 日本語能力試験(Nレベル) | |
対象 | 日本語を普段から使用する人 (日本人や日本語レベルが一定水準以上の人が対象) | 日本語を母語としない人 (外国人が対象) |
試験内容 | 漢字、表記、敬語、言葉の意味、語彙、文法+総合問題 | 言語知識(文字・語彙・文法)、読解、聴解 |
レベル (低い順で表示) | 準7級~1級 | N5~N1 |
このような大きな違いがありますので、間違わないよう注意しましょう。
日本語能力試験(Nレベル)はN1~N5の5段階評価で分けられる
日本語能力・Nレベルは企業が外国人の日本語能力を把握するうえで、重要な指標となります。
日本語能力試験では認定レベルをN1~N5の5段階で定めています。
N数字が下がるほど、出題レベルは上がり、取得するのも難しくなります。
日本語能力試験:N1レベル(最高レベル)
幅広い場面で使われる日本語を理解することができる。
★通訳ができるレベル
日本語能力は非常に高く、日常会話はもちろんビジネス上の会話や専門用語、若者言葉(スラング等)なども理解することができ、ほとんど日本人と同じようにコミュニケーションに参加できます。
日本語能力試験:N2レベル
日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる。
★日本語でディスカッションできるレベル
N1レベルまではいかないものの、日常会話は問題なくこなすことができ、ビジネス上でも大いにコミュニケーションを取ることができます。
日本語能力試験:N3レベル
日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。
★一人で作業を任せられるレベル
日常会話は問題ありませんが、ビジネス上の会話やニュアンスやアクセントによっては伝わらないことも多少あります。
IT関係や製造の仕事であれば、仕様書や要件定義書などを読み、自分で作業を行えます。
日本語能力試験:N4レベル
基本的な日本語を理解することができる。
★漢字の読み書きが出来るレベル
日本人が話す日常会話はある程度理解できますが、自分の考えなどを話す(アウトプットする)のは少し苦手な傾向にあります。
日本語能力試験:N5レベル
基本的な日本語をある程度理解することができる。
★挨拶や自己紹介ができるレベル
挨拶や簡単な受け答えは出来ますが、コミュニケーションを満足に取るのは難しいです。
抜粋:日本語能力試験HPより一部抜粋
外国人人材の日本語能力をNレベルだけで判断するのは難しい
外国人人材を募集する際に、コミュニケーション能力を測る指標として『日本語能力試験(Nレベル)』は大きなものさしとなります。
基本的には、このNレベルである程度判断することが出来るのですが、注意点もあります。
推定のNレベルを履歴書などに記している(受験はしていない)
外国人人材の中には、推定のNレベルを表記・自称する人もいます。
これは、実際には試験を受けてはいないものの、「このレベルくらいまでならある」と推定で話を進めようとすることです。
日本語能力試験では、成績証明書も発行しているので、そちらも確認することで人材とのミスマッチを防ぐことが出来ます。
Nレベルは同レベル内でも差が出やすい
同じN3レベルでも、『日本での滞在経験がある人』と『試験だけ受けた人』では大きな差が出ます。
例えば、日本人で英検を持っている人でも、『英語圏で暮らした経験がある人』と『ない人』では大きな差が出るものです。
Nレベルは採用を行う上で一つの評価指標ですが、本当のコミュニケーション能力は実際に会って話してみないとわからないのです。
日本語能力試験の問題例をNレベル別に紹介
では、日本語能力試験ではいったいどのような問題が出題されているのでしょうか。
N5・N3・N1のレベル別に「言語知識(文字・語彙)」の問題を見ていきましょう。
N5試験の問題例(一番低いレベル)
Q.___の ことばは ひらがなで どうかきますか。1・2・3・4から いちばん いい ものを ひとつ えらんで ください。
新しい くるまですね。
1:あたらしい 2:あだらしい 3:あらたしい 4:あらだしい
抜粋:日本語能力試験HPより
このように問題文も平仮名で表記されており、日本語入門クラスの問題となります。
N3試験の問題例
Q.__のことばの読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
山本さんはクラスの代表に選(えら)ばれた
1:たいひょう 2:だいひょ 3:だいひょう 4:たいひょ
Q.___のことばを漢字で書くとき、最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
困(こま)っているときに。先生にたすけていただきました。
1:助けて 2:守けて 3:支けて 4:協けて
抜粋:日本語能力試験HPより
問題文でも漢字が使われるので、問題が読めないと解けないレベルまで上がります。
また、2つ目の問題のように漢字や意味を紛らわしく織り交ぜたトリッキーな問題も出題されます。
N1試験の問題例(一番難しいレベル)
Q.___の言葉の読み方として最も良いものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
彼は今、新薬の研究開発に挑んでいる。
1:はげんで 2:のぞんで 3:からんで 4:いどんで
Q.( )に入れるのに最も良いものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
私の主張は単なる( )ではなく、確たる根拠に基づいている。
1:模索 2:思索 3:推測 4:推移
抜粋:日本語能力試験HPより
いかがでしたでしょうか、N1レベルまでいくと日本人でも難しい問題が出題されます。
日本語能力試験やNレベルがどのくらいの難易度なのかを知るきっかけになると思いますので、採用の担当者は実際の問題例を見てみるのもおすすめします。
外国人を採用するならN3~N4がおすすめ
上記のように日本語能力試験は5段階のレベルからなっており、保持しているレベルによってその人のコミュニケーション能力が異なります。
仕事の現場で戦力として迎えるには、やはりN1やN2レベルが欲しいところですが、実際のところ保持者は少なく、競争率も高いため採用するのは難しいと言えるでしょう。
コミュニケーションが取れることは、仕事をする上で前提となる重要なポイントの1つです。
Nレベルはあくまで試験を受けた時点(多くの人は母国にいる時に受験)の日本語レベルですので、日本での生活や仕事を通してNレベル以上のコミュニケーション能力を育てることもできます。
中でも、N3~N4レベルの外国人は、個人差はあるものの上達スピードは速いので中長期的に見れば、N1レベル相当の人材に育てあげることも可能です。
このことから、N1やN2といった高レベルの人材が採用できないという会社は、伸びしろのあるN3~N4の人材に目を向けてみることをおすすめします。
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