日本における労働力人口の不足は、今後ますます深刻になっていくことが予想されています。
そのため企業の将来に向けて貴重な戦力として外国人技術者を採用する会社が増えています。
ところが、外国人技術者の採用率が上がるほど、受け入れについての悩みも聞こえてきます。
せっかく採用した外国人技術者にきちんと長く働いてもらうには、どうしたらよいのでしょうか?
外国人技術者を受け入れるには社内体制の整備が必須
外国人技術者を採用する企業が増えている現在、誰もが今日からでも外国人と同僚になる可能性を持っています。
また、このように多くの企業が外国人を採用することで、受け入れるハードルも下がっているように思えます。
しかし、日本人と同じような感覚で採用してしまうとすぐに辞めてしまったり、予想外の苦情を受けたりすることがあるのです。
外国人技術者を採用し、将来的に企業の戦力となってほしいと考えるなら、採用前に外国人人材を受け入れる社内体制を整備することが必要なのです。
社内体制によって変わる外国人技術者の定着率
外国人は、異なる文化や気候、価値観のなかで育っています。
ですから日本の文化や価値観を基準に判断されると、理解できないことが少なくありません。
もしかしたらそのすれ違いの一つひとつは小さなものかもしれませんが、積もり積もれば不満となって導火線に火を点けてしまうかもしれません。
そういった状況を作らないためにもまずは、外国人の文化や価値観を尊重する体制を社内に作る必要があるのです。
外国人人材の定着率を上げる社内体制とは
外国人技術者を受け入れる社内体制とは、どんなものでしょうか?
それは求人前の準備から始める必要があるのです。
外国人技術者採用の基準を明確にする
人手不足だからといって外国人技術者であればすべてOKというわけにはいきません。
新卒にしても中途採用にしても、日本人を採用するときより求める人材について明確にしておく必要があります。
ジョブ・ディスクリプションで職務を明確化
採用する外国人の出身国によって文化に違いはありますが、欧米では人材を募集する際、職務内容を明確化する「ジョブ・ディスクリプション」を明記するのが当然のこととなっています。
ジョブ・ディスクリプションを見れば、担当する業務内容やその範囲、難易度、必要なスキルがわかるからです。
日本では、採用後に配属が決まることも多いので、ジョブ・ディスクリプションを明記している企業はあまりありませんが、外国人を採用するのをきっかけに作ってみると求める人物像がはっきりとわかるようになり、採用試験や面接などにおいてもぶれることがありません。
また、職務内容がはっきりしていれば、採用後にお互い無駄に対立したり、不要な業務を増やすこともありません。
ただしジョブ・ディスクリプションは、これだけやればいいという認識にもつながりやすくなることもあります。
他のことは何もしなくて良いというわけにはいかないことも多いので、導入の際には制度や運用をきちんと設計する必要があります。
異文化と価値観の相互理解を深める
あいまいな言葉のやり取りでもなんとなく仕事が回ってしまうのが日本の企業です。
しかし、これは日本特有のコミュニケーションであることを理解する必要があります。
外国人技術者を相手にしたら、具体的に指示しなければ必要な成果は得られませんし、結果が思った通りじゃなかったとしたら、指示を出した方が悪いのです。
日本人社員の理解度を上げる社員研修を継続的に
コミュニケーションの違いのほか、宗教によって習慣や考え方、価値観の違いなども生まれます。
外国人技術者を採用することを社内で決めたら、採用前から社員に周知したり、理解を深めるための研修を行ったりすることが必要です。
受け入れる側が理解を深めることで働きやすい環境に変わっていきます。
特に差別につながる言葉などは配慮が必要です。
また、採用後も知識や日本人社員の意識のアップデートを促すために、定期的に研修などを行うようにするのがおすすめです。
日本語レベルの確認とスキルアップをサポート
外国人技術者は、大学や専門学校の卒業や仕事の経験があることが就業ビザを取得する条件ともなっているので、技術的なスキルについては問題がないことが多いです。
しかし、戦力として長く活躍してもらうためには将来的に高いレベルで日本語を使いこなす力を着けてもらうことが不可欠です。
そこで、採用するときに現状の日本語レベルを確認するのはもちろんですが、そこから日本語力の向上を目指した研修をOJTに組み込むといった対策も必要になります。
業界用語や社内用語を理解する工夫もプラス
生活に必要な日本語力に加え、ビジネスに必要な日本語力の向上も不可欠です。
特に業界用語や社内用語などは、普通に日本語を学んでいるだけでは身につかない言葉です。
業界や企業の文化と一緒に理解を深めていく学びの場が必要です。
こうした企業独特の用語や業界用語などは日本語と他言語との対照表を作って共有したり、勉強会を定期的に行ったりすることで仕事に支障がないようにします。
また、こういった勉強会では常に基礎的な部分をケアしつつ、レベルアップした内容を加えながら継続し、誰もが参加しやすい雰囲気づくりを心がけます。
社内の受け入れ態勢も整備
外国人を採用することを決めたら、社内の就業規則を見直すなど、環境のすべてを確認する必要があります。
文化の違いはもちろんですが、宗教からくる習慣や考え方などもあり、そういったことへの対応も必要になります。
成長をサポートするメンター制度も一考を
外国人技術者を採用する際、単身で採用することも多いのが現状です。
そうなると、孤立したり、孤独感を感じる人も少なくありません。
本来であれば、本音で語り合ったり、相談や質問などが気軽にできる環境を整える必要があります。
こうした対策としてメンター制度も一案です。
メンター制度とは、同じ部署の上司や先輩とは別に、他部門やチームの年齢の近い年上の先輩社員がサポートする制度です。
先輩社員がメンター、後輩社員がメンティと呼ばれ、仕事の指導やサポートをしたり、相談にのったりして後輩社員の心理的負担を軽減する取り組みです。
上司には相談しづらい些細ないことも言葉にすることができると、問題が大きくなる前に対応できることが多くなります。
外国人技術者の定着率を上げる対策の一つです。
はっきり発言することも外国人のサポートに
外国人技術者を交えたミーティングなどは、発言者はゆっくり明瞭に話したり、誰もがわかりやすい表現を使ったり、お互いにその場で理解できるよう工夫することが大切です。
また、語学が堪能な社員は、外国人技術者がミーティングの内容を理解するためのサポートを行うなど、小さな気遣いを欠かさないようにします。
お互いに仕事に支障を来たすことなく、誰もが気持ちよく働ける環境を整えるといった努力が必要になります。
社内体制を整えることでトラブル回避を
初めて外国人技術者を採用する企業は、多くの不安を抱えていることが多いものです。
しかし、その不安は社内の体制を整えることで少なくすることができます。
また、雇用したあとのトラブルのリスクを抑えることにもつながります。
社内体制の整備に本気で取り組み、日本人社員にとっても外国人技術者にとっても良い環境を作ることが戦略的な採用計画の実施に繋がっていくのです。